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2007.06.24

<BOOK>"さらば朝日ソノラマ"
「ウルトラマンメビウス アーカイブドキュメント」

 特撮ファンには「宇宙船」「ファンコレ」SFファン、アニメファン等にはソノラマ文庫でお馴染みの出版社、朝日ソノラマの解散が決まったそうです。
もう20年も債務超過だったのが16億円にまで膨れあがってしまい、自力再建を断念したとの事。

http://www.asahisonorama.co.jp/

 子供の頃、ウルトラマン等のソノシートを擦り切れるまで聴いた、そんな想い出のある方は40歳台の方には多いのではないでしょうか。自分の場合、従兄弟のお下がりで貰った数々の盤が印象深く残っています。「サイボーグ009」「エイトマン」「ワンダースリー」「快獣ブースカ」等々自分が一、二歳の頃の作品を興味深く聴いたのを覚えています。音と画から実際の画面を想像する、あるいはプレイバックするという事を我々の世代は強く"訓練"されたものですが、それはまさに朝日ソノラマのソノシートからだった、と言っても過言ではありません。(同業他社としてはエルムの名も思い出されます)

 時を経て「宇宙戦艦ヤマト」が話題になった時、朝日ソノラマの名に再会しました。ヤマトの小説は石津嵐によって放映当時にハードカバーで刊行されており、ブーム化の際には、島や真田といった面々の(アニメからは想像もつかない)末路等でクラスメートの間では論議を呼びました。そもそも、打ち切り後意気消沈しながら海外版の制作に着手していた西崎プロデューサーに「国内にもファンがいるのだから」と勧めたのが朝日ソノラマだった、というのも、75年にソノラマ文庫の栄えある第一冊目に石津版ヤマトをチョイス(放映終了後に!)していた辺り、慧眼としか言いようがありません。
 ソノラマ文庫ではその後高千穂遥作「クラッシャージョウ」がヒットシリーズとなるのですが、挿絵を担当したのが安彦良和、それも「ザンボット3」と同時期(もちろんガンダム以前)のというのも驚きです。(推薦したのは「コン・バトラーV」等で繋がりもあった高千穂自身と思われるが)そして、トミノ御大による「機動戦士ガンダム」の小説もまた、ソノラマ文庫からでした。(角川じゃないよ!)アニメの(ティーン向け)ノベライズとしても元祖なら、ノベルからのアニメ化としても元祖?と言えるのでは無いでしょうか?所謂"ラノベ"の祖と断言するのには異論はないでしょう。
 更には、ファンタスティックコレクション、「宇宙船」等による、ウルトラマン、ゴジラ、仮面ライダーといった特撮諸作品の再評価も大きな功績と言えます。ファンコレ無くば「ザ☆」「80」の新作も、もちろんその後の作品も有り得たかどうか。特に「80」「スーパー1」終了後の特撮冬の時代にファン達の渇きを癒すのみならず、新旧問わない情報の発信、啓蒙を続け(ガレージキットも模型誌ではなく宇宙船から火が点いたと言って良い)読者、編集者から多くの才能を輩出した事(雨宮慶太、篠原保、高寺茂紀、荒川稔久、古怒田健志、大石真司、小林雄次他各氏)等決して評価しすぎという事は無い。
 他にも「地球へ」「無限紳士」「ダーティーペア」「吸血鬼ハンターD」(朝日新聞社出版部で続刊が出るそうです)「ARIEL」等、ソノラマを故郷とする作品も数知れず。
 極言すればソノラマ無くしてガンダムも無ければヤマトに端を発する大作アニメ映画ブーム→ジブリ作品も無し、ゴジラもウルトラもライダーも復活せず、フィギュアブームも無く、もちろんハルヒもらき☆すたも無く、バンダイはいつの間にか潰れ…とまでなるかはともかくとして、諸々のブームも無かったか、あるいは有ったとしても10年以上は遅れていたのかもしれません。あるいはウルトラもライダーもゴジラも過去の遺物として単なる懐古趣味の対象に堕していたかもしれません。
(余談となるが、'80年代の特にジャンプ系のアニメが今それなりに露出している事については、残念ながら単なる"懐古趣味"或いは"成長しきれない子供"以上の評価ができる、とは言い難いと思っている。もちろん世代間差から来る思い入れの差というのもあるのだろうが、客観的に見て「いい年をした大人がガキの頃の漫画を卒業できない」という印象しか感じられないのだ。誤解を恐れず切って棄てるなら"幼稚"の一言に尽きる。昔の"TVまんが"の全てが大人の鑑賞にも堪える傑作だったとはもちろん言わないが、最低限ウルトラについては同列にされては困る、という思いはある。閑話休題)

 時は流れ2000年、意欲作「仮面ライダークウガ」の登場。宇宙船も最大限にこの作品を推し続けた。元々「ギンガマン」辺りからあった"イケメンヒーローブーム"が爆発的になったのもこの時。それを見逃さずメディアワークス社からは「電撃特撮通信」が刊行、翌年には「NewType the Live」も参戦、また辰巳出版の「ウルトラマンAGE」、「東映ヒーローMAX」等も加わり、さながら第二次特撮ブームの頃を彷彿とする出版大乱戦の様相を呈しだした。こぞって"イケメンヒーロー"を取り上げる各誌に対して宇宙船ならではの硬派路線を取りつつも、とまどいが感じられる紙面になり始めた。また、季刊誌故の情報の遅さもネックとなった。それでもゴジラシリーズについては一つ頭抜きんでいた印象があった宇宙船ではあったが、そのゴジラもシリーズの終焉を迎えそれを追うように2005年7月を持って休刊となる。ネットにその舞台を移したとはいえ、宇宙船の読者欄は活発な議論の場でもあった。だが、皮肉な事に特撮史上に残る事件の一つと言える「仮面ライダー響鬼プロデューサー(と文芸スタッフ)降板事件」が起こったのはその直後であった。この事件について「東映ヒーローMAX」は特に触れず、「NewType the Live」は「前向きに観よう」と切って捨ててしまった。もし、あの時宇宙船が健在だったならば、執筆陣は、読者意見はどのように誌面を飾っていただろうか?

 そして、これが「宇宙船編集部」としての最期の一冊となる
 「ウルトラマンメビウス アーカイブドキュメント」だ。
40年の年輪の積み重ねを生かし、親子世代に渡って興奮と感動を一年間我々に贈り続けてくれた「ウルトラマンメビウス」。ファンコレのフィナーレとしてこれ以上相応しい作品は無いだろう。"構成・執筆"は本編で考証、脚本を務めた谷崎あきら氏。執筆陣にも五十嵐浩司、杉田篤彦、早川優、井上雄史、佐原晃といったお馴染みの錚々たる面子が揃った。誌面も豊富なビジュアル、得意の"重箱の隅"的設定のフォロー、充実したスタッフインタビュー、とまさに往年のファンコレの真骨頂。メビウスに因む旧作も特集しており、「第○期ウルトラは余り観ていなかった」ファンにも嬉しい記事だ。\2,400という価格は安いものではないが、内容の充実ぶりを思えば決して躊躇する値段ではない。メビウスのファンは勿論だが、そうでない特撮ファンにも資料として、いや「これこそムック本の鑑」として手に入れて頂きたい。

 しかも、困った事に前述の状況もあってか?かなりの本屋を廻ったが扱いが無く、アマゾンでようやく入手に至った。部数も余り多くない(小学館の「超全集」もあまり店頭で見かけない)と思われるし再販もまず有り得ないであろう。「古本で見かけたら」等と呑気に構えるのは危険だ。直ちに入手に走るのが吉!だろう。

今までありがとう、朝日ソノラマ。おつかれさまでした。
しかし、"店仕舞い"とは粋なお別れの言葉じゃあないですか
(>_<)/~~

追記:HobbyJapan社から「宇宙船」が来春復活予定との事。
編集チーム等もほぼそのままらしい、との事で期待したい。

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受信: 2007.06.24 11:49

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