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2010.10.13

【フィギュア17】1話「今の自分は好きですか」

予告通り、各話解説を始めたいと思います。
一回につき、一話をストーリーの進行に従って解説していきます。同人誌版の時には、紙数の都合で割愛していた粗筋も追加していく事とします。

Fg171_2 

1話「今の自分は好きですか」 2001年5月27日放映
 (脚本タイトル「北の大地は好きですか?」)
 2001年5月27日放映
 絵コンテ:高橋ナオヒト 演出:矢野博之、村田和也
 作画監督:沢田正人、斉藤英子、佐藤陵、原将治
 ゲスト:知世/水樹旬

地上波番宣映像15秒(ナレーション矢島晶子)
「二人の少女の想いが一つになった時、未知の力が生まれる。戦慄のリアルスケールSFバトル、フィギュア17。今、もう一人の自分を目撃する。」
 地上波番宣映像30秒(ナレーション矢島晶子)
「雄大な自然に包まれた北の大地。10歳の少女、つばさの前に突然自分そっくりの少女もヒカルが現れた。つばさとヒカルの心が一つになった時、光に包まれて未知の力が生まれる。戦慄のリアルスケールSFバトル、フィギュア17。今、もう一人の自分を目撃する。」

ある宇宙空間を行く宇宙船。その格納庫から暴れ出すモンスター。宇宙船は異常を来たし、太陽系内にワープアウトした。
まだ肌寒さの残る北海道、萌野町の6月。東京から引っ越してきて二ヶ月になる小学四年生の少女、椎名つばさ。脱サラしてパン職人修行に忙しい父に、授業参観の事を言い出す事ができないまま、登校していく。

冒頭のシーンを宇宙船から始めるか、北海道から始めるかというのは、結構分かれ道かもしれない。結果として宇宙船から始まっているが、一切セリフ抜きの短い描写に終わっている。制作発表時にさんざん言われていたのが「北の国から」+「遊星からの物体X」という言葉であったが、視る人に「これはSFですよ」と念押ししてから入っている、という事であろう。事実、そこから先はつばさの日常を描く地味な描写が続くのだから。
 とはいえ、サブタイトル後からの描写は的確でかつ無駄がない。バスの中でのつばさのモノローグまではナレーションも説明セリフも殆ど無いのに、以下の事が全て説明されている
○舞台が北海道(かどうかはこの時点では不明瞭だが「Innocent Fields!」のスキャットは何げに「北の国から」を暗喩している、少々ベタだが)の田舎(小学校までバス通学という辺り)
○主人公の女の子(つばさという名前はアツシとトオルが呼ぶので分かる)は牧場に住んでいる
(が、北海道に馴れていない事、凛の台詞等から元々住んでいた訳ではない事が示唆される)
○つばさは内気だが「良い子」である
(トオルとアツシに声を掛けられると赤くなるが、凛やサクラには深々と頭を下げて挨拶している)
○母親はいない(一人で朝食の準備、写真の存在)、父親への思いやり(「お仕事大変そうだしな」)
 ざっとこれだけの状況説明が僅か5分少々でなされているのは特筆である。しかも、いかにもな説明台詞も殆ど無く、視聴者にも意識させずにというのは職人技と言っていいだろう。

日直の仕事を手伝って貰おうとするも、クラスのガキ大将格健太には取り合って貰えず、クラスメイトの美奈や飛鳥からも厳しい言葉を浴びせられてしまう。
 バスの中のモノローグから授業が始まるまでは、クラス内のキャラクターの力関係(?)とつばさの内気さを印象づける描写が続く。特に、美奈の嫌らしさは際だつが、健太の性格描写(ガキ大将っぽいが非はすっぱり認める男らしさ)も的確になされており飛鳥等も含め、つばさと特に対照的である。
 特筆すべき点として、「単なるイジメ」とはなっていないという点がある。たとえば飛鳥の「椎名さんももっとはっきり言ってやりなさいよ」という台詞からは、飛鳥の公正さと共につばさの側にも非がある事を示唆している。また、美奈にしても矛先はつばさだけでなく男子全体に向けられている感もある。或いは、「こっちの子となんか~」も先生への発言も、単に美奈らしい自己顕示なだけかもしれない。何にせよ、「イジメを受けて孤立」ではつばさ自身の問題からずれてしまう訳なので、的確な処理といえる。
 どうでも良いが、授業参観って2時間もやりましたか?自分の時は1時間だけでしたが。

授業参観が始まったが、父はとうとう現れずじまいだった。皆が父や母と下校していくが、つばさと健太は雨の中孤独を感じていた。落とし物の傘をつばさに差し出してくれた健太に対し、上手く気持ちを伝えられずに彼を怒らしてしまう。雨に打たれながら帰りかけたつばさの前に送れてきた父が。つばさは思わず父の胸に飛び込まずにはいられなかった。
 傘を差し出す健太、一瞬良い奴かと思うがちょっとキレるの早くない?まだまだこの時点では良い奴的印象には遠い。雨の中をとぼとぼと濡れながら帰るつばさ。
 高橋監督は「降る物」を「悲しみ」の描写として使っている。この雨がそうだし、9話ラスト翔が亡くなった事を聞かされた後降り始める雪、10話の殆どもそうだし、逆に4話のキャンプの時には風は吹いても雨は降ってない(ニセコでの戦闘で降っていたのは例外か)。EDで二人に「降る」物が逆回しで戻っていくのは、悲しみの反対→「二人でいる喜び」と言う事なのだろうか?一度、高橋監督にお聞きしてみたい物である。

謝る父親に明るく振る舞ってみせるつばさ。だが、本心では東京への郷愁が募っていた。仲良しだった友達知世に手紙を書きながら、今、自分に友達がいない事を改めて感じてしまう。
その頃、宇宙船はモンスターによってコントロールを失い、地球に向かって暴走を続けていた。

 遅れてきた父に悲しみをぶつけるものの、家に帰った後の会話では、やはり「良い子」をつくろうつばさ。ともちゃんへの手紙のモノローグになって雨は止むが、ここに至ってやっと3曲目のBGM「ゆらぎのなか」が流れる。(2曲目「牧場」は登校するつばさと牧場の人達の描写に)手紙の文面は悲しみを感じさせる物ではないのに、バックに流れるメロディが元気を装う手紙の内容の空虚さとそこまで溜っていた悲しみを代弁し、友達云々の所で効果的に止まる。
 で、多分殆どの視聴者が忘れているであろう宇宙船が地球に迫る所でAパート終了。ちなみにサブタイトルとアイキャッチについては1話のみ別物である。録音が数回に分けて行われたとか有るのだろうか?

つばさは夢を見ていた。北海道でパン屋の修行をしようという父の告白、仲良しだった知世とのお別れ、「お父さん、私のせいでお母さんが死んだの?」法事で聞いた母の話…。
 Bパートは回想(つばさの夢)から。「ともちゃん」についてのフォローはつばさの東京への未練と共に「友達が少ない」事を語っている。法事の後の回想に立て続けに行く所では、色調をセピアから赤に変えてはいる物の少々分かりづらい。つばさが明らかに幼いので別の時だと分かるのだが、「北海道に行ったのに街中?」と一瞬混乱しない事もない。
 「お母さんとお父さんにとってつばさは全てだよ」英夫のこの言葉は後々の鍵となる。

吼える飼い犬のてんまる。目を覚ました窓の外をまばゆい光が。落下したUFO?を追っていったてんまるを探しに出たつばさが見たのは、墜落大破した宇宙船と怪我をして倒れている青年、そして見た事も無いグロテスクなモンスターだった。
 「てんまるがUFOにさらわれちゃう!」といって夜中に暗い森の中へ懐中電灯一つで掛けだしていくつばさ。確かにここで出て行かねば物語は成立しない所だが、今までのつばさからすると意外な感じがしてしまう。(北海道には熊もいるぞ!)ここは、「本来つばさにはそれだけのバイタリティがある」という解釈をしておこう。
 てんまるへの呼びかけが「こっちへいらっしゃーい!」(それも大声で)に対して、倒れているD.Dへの呼びかけが「あの…あの…」という辺り、人付き合いが苦手という性格描写はここでもぬかりない。

カプセルを使って変身し戦う青年だったが、モンスターの圧倒的な力に倒されてしまう。逃げるつばさは宇宙船の中に追い詰められてしまう。怪物が宇宙船内のカプセルを刺し貫いた時、こぼれ落ちたコアが光を放ちつばさの体を包んだ。
D.Dの話す言葉が完全な異星語というのは、外人だろうが宇宙人だろうがコミュニケーションしてしまうのが常のアニメでは珍しい。しかも録音処理かと思いきや、台本にはちゃんと「宇宙語」が書いてあり小山力也氏はそれを演じるという徹底振り。小山氏は2話以降はちゃんと日本語になると知って胸をなで下ろしたそうだ(笑)とはいえ、宇宙語と苦戦の描写のみで、マギュアの異常ぶりを伝えようとする辺り、演出のストイック振りは徹底している。
 つーか、つばさ、ぼーっとしてないで逃げなさいよ(^_^;服が引っかかる辺り、焦り振りを描写して芸細。目玉が嘗め回すような描写は懐かしの80sOVAっぽい。

光の中から現れた時、つばさは先に青年が変身したような、しかし、大人の女性の姿<フィギュア>に変わっていた。「私はもう一人のあなた」とまどうつばさだが、聞こえてくる声に従って、なんとかモンスターを倒す事ができた。
 そして、リベルスと融合したつばさ。球体の中でのつばさのフルショットは1話のみ、高橋監督のいう"コクピット的な描写"にならないが為であろう。モニター?画面は今時当たり前だがCGを駆使。昔はこの辺の描写は手間が掛かった物だが最近は楽々である。が、凝ったモニター画面に「せいたいはんのうじぞくちゅう」は上手くできているというか笑えてしまうというか。モニター上は昼間(明るい)になっている点も細かい。フィギュアパンチ(そんな名前無いが)で決める瞬間はハーモニー(止め絵)処理だが、思った程の効果が得られなかったのかハーモニー描写は初期話数で姿を消している。

「離れるね」元の姿に戻れてほっとするつばさ。だが、その傍らには、裸のままの"もう一人の自分"の姿があった…。
 分離したつばさの前に現れたヒカル。大事な所は隠してますが、地上波放送の時はどうなっていたのだろうか?(^_^;何にせよこの引きで一ヶ月待てとは、つばさならずとも「えぇーっ?!」である。

【キャラクター】
 第1話という事で、突っ込んだ描写は少ないものの、僅かな描写にも関わらず的確にキャラクターを印象づけている。一喝でもって厳しさを印象づけた六郎じいちゃんと、対照的な人の良さを感じさせる凛ばあちゃん、台詞無しにも関わらず存在をアピールするサクラ、のいばらぎファミリーもだが、何といっても四年二組の面々である。問題児的な健太、「クラス委員」している飛鳥、単なるいじめっ子に終わらない美奈、と実に無駄のない描写がなされている。翔が授業以外で目立たないのは後にして思えば意外だが、ここは出番を抑えておいた方が視る方も混乱しないだろう。もちろん、つばさについては、これでもかとばかりに内向的な性格が強調されているのは言うまでもない。

 【総論】
 物語の始まりを丁寧に描いているという点について、1話としては申し分ない出来である。サブタイトル後の美瑛周辺(という事にして話を進めよう)の風景描写の素晴らしさは、さすが小林プロ!とうならせる出来だし、脚本については派手ではないが説明調でないダイアログの良さが光る。曲数を抑えた音楽の生かし方の的確さも他の凡百の作品と一線を画す。
 ただ、本当に始まりだけ、ではあるので、これをもって一ヶ月後も「見てください」という事を考えると派手さに欠けるのもまた事実であり、「フィギュア17」の営業的な敗因の一つと言えなくもない。ただ、作品としてはこれでベストだったと全話観た人なら思っていただけるのではないだろうか。

 【2話予告】
「恐ろしい未知の生物、マギュア。自分そっくりの人工生命体少女、ヒカルの出現。
突然巻き込まれた出来事に、驚き、戸惑うつばさ。
しかし、ヒカルに翻弄されながらも、自分の心が徐々にはずみだすのをつばさは感じていた。
―この子は、私のなりたい私かもしれない―」
「一緒にいたい人はいますか」

バンダイチャンネル フィギュア17 1話無料配信中

 

フィギュア17 高橋ナオヒト 千羽由利子 米村正二 高見沢俊彦 矢島晶子 折笠富美子 小山力也 加藤優子 柚木涼香 釘宮理恵

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