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2013.12.29

<夜毎の音盤>ウルトラマン80-冬木透とTALIZMANの華麗なる音楽世界-

サークル思想脳労さんの同人誌「ウルトラマン80 全話解説本」で書かせていただきました音楽解説の原稿を、了解を頂きましたので公開したいと思います。基本的にライトユーザー向けの解説本ですのでマニアの方には言わずもがなな食い足りない内容かも知れませんが、そこら辺はどうかご容赦下さい。

また、今回「ウルトラマンA 全話解説本」でも拙文ではございますが寄稿させていただきました。日曜日東ナ54a思想脳労でお求めいただけますので、コミケご参加の方はこちらもよろしくお願い致します。魔法少女まどか☆マギカ 鹿目まどか 美樹さやか 巴マミ 佐倉杏

ウルトラマン80の映像を盛り上げた要素には、ストーリー、特撮、キャストなど色々あろうが、音楽もまた重要な要素であろう。その音楽を担当したのが、作曲家冬木透氏である。

 昭和10年満州生まれで、本名は蒔田尚昊(まいたしょうこう)TV草創期のTBSで効果音の担当をしていたが音楽も手がけるようになり、独立して多くのTVドラマ、映画、アニメの劇伴を担当した。また純音楽では、合唱曲、オルガン曲を多く手がけている。しかし冬木透といえば、「ウルトラセブン」(1967)を筆頭とする円谷プロ作品の数々であろう。「帰ってきたウルトラマン」「ミラーマン」(1971)、「ウルトラマンA」「怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス」(1972)、「ファイヤーマン」(1973)、「ウルトラマンレオ」(1974)、「恐竜探検隊ボーンフリー」(1976)と円谷作品のイメージを強く印象づける音楽を数多く送り出してきた。

 「80」前年の1979年、アニメという形で久々の登場となった「ザ☆ウルトラマン」は原点回帰という事から、当初宮内國郎(ウルトラQ、ウルトラマンを担当)が登板しロサンゼルス録音によるパンチの効いたブラスサウンドが使用されていたが、舞台がウルトラの国など宇宙的な広がりを見せる事となり、追加録音と幾つかの挿入歌の担当として冬木氏が参加する事となった。この追加録音分については、コロムビアレコード発売の「冬木透作品集」という二枚組LPアルバムの四分の一(他はセブン、新マン、Aの各劇伴で片面ずつの構成)を使って交響詩という形でのレコードリリースとなった。これは、当時「交響組曲宇宙戦艦ヤマト」(1977)のオリコンLPチャート3位という大ヒットにより、コロムビアレコード作品の多くが劇伴をステレオ録音してアルバム化していた流れの一環である。冬木氏の過去作品は全てモノラル録音(「ミラーマン」3回目のみステレオ)だったが、この交響詩は初のレコード化前提の劇伴ステレオ録音であり、本人としても力を入れた作品であった事は当人のコメントや何よりその作品の出来映えが物語っている。もちろん、そのスケール感溢れる音楽は、特にU40編を中心に作品を感動的に盛り上げてくれた。

 そして、「ウルトラマンはやはり実写で」との声を受けて制作された「80」の音楽に冬木氏が指名されたのは、当然の流れと言えるだろう。単なる作曲家というより「円谷プロの一員」的な気持ちを持っていたと語る冬木氏にとっても、念願の実写ウルトラマン復活、しかも今回は最初からの登板とあって、より力が入ったであろう事は想像に難くない。

 

ここからは、実際の「80」の音楽について語っていきたいと思う。

まず冬木氏の音楽の前に主題歌について述べておきたい。主題歌を歌唱したのはロックバンド「TALIZMAN」、因みに冬木氏の言によれば録音時にはまだグループ名がついていなかったそうだ。同時期公開されたリバイバル版「モスラ対ゴジラ」のイメージソング、「超人ロック」のイメージアルバム等を手がけたが、リーダー木村昇(宇宙刑事ギャバン、科学救助隊テクノボイジャー、未来警察ウラシマンのハーリー木村、HARRY)の脱退などにより、活動期間は短い。コロムビアレコードとしては、当時大人気だったロックバンド「ゴダイゴ」(西遊記、劇場版銀河鉄道999)の弟分的存在(この後メンバーはタケカワユキヒデのバックバンドもつとめている)、悪く言えば二匹目のドジョウ?的な狙いがあったのか、サウンドの傾向としてゴダイゴとの類似性は強く感じられる。(現に当時、自分の廻りでは「ゴダイゴじゃん」的な声が多かったし、キャラクター系以外のシングル曲ではタケカワユキヒデ作曲や奈良橋陽子が訳詞等、関わりは強い)

とはいえ、前作「ザ☆ウルトラマン」が宮内國郎作曲、ささきいさお歌唱という超王道的歌曲だっただけに、80年代(当時バラ色の未来的イメージだった)のニューヒーローを印象づけるサウンドとしては申し分のない主題歌である事はもちろんであるし、ソフトロックとはいえ昨今の平成ライダーのように「幼稚園で子供が歌えない」ような逸脱ぶりも決してなかった。 更には、劇伴作曲の冬木氏がこの主題歌に惚れ込んでいた事は、後のBGMアルバム等でのコメントからうかがい知る事ができ、主題歌、「レッツ・ゴーUGM」共に積極的に自分の音楽に組み込んでいる。これは新マン以降のウルトラシリーズ、ファイヤーマン等では無かった事である。元々冬木氏自身は「他人の作曲でも主題歌の譜面を貰えれば積極的に劇伴に生かしたい」という意向だったのだが、熊谷健氏らプロデューサーが変に気を使ってしまっていたという事らしい。シリーズ終盤になって主題歌は「がんばれウルトラマン80」にバトンタッチとなるが、前作のモチーフも生かしたメロディ(サビの♪ウルトラマーン)等で番組との統一感は失われる事は無かった。

TALIZMANのメンバーのうち、ベースの石川恵樹は「ブルースワット」(1994)、「ビーロボカブタック」(1997)等で佳曲を残しているが、前述の木村昇は1983年を最後に姿を消してしまっている。「宇宙刑事ギャバン」(1982)の挿入歌「青い地球は母の星」等、名曲も多いだけにその短い活動期間を惜しむ声は少なくない。

 

 いよいよ、冬木氏による劇伴について述べていきたい。

 冬木氏にとっては「レオ」以来となる実写ウルトラだが、基本フォーマットは変わりないものの聴いた印象としては大きな隔たりがある。それはやはり、前述した「ヤマト」に端を発するアニメ音楽の盛り上がりと決して無縁ではないと思われ(ウルトラシリーズ旧作劇伴のアルバム化もこの時期行われており冬木氏自身もライナーノーツで自作について語っている)、前年の「ザ☆」を経て、更にスケール感のあるサウンドが生み出されている。例えばストリングスが唸るように怪獣の猛襲を表現するM-42「怪獣大暴れ」、「ミラーマン」M-12SGM・激戦(苦戦)」と同コンセプトのM-47UGM対怪獣 有利」等の戦闘音楽にしても、過去作品と比べて格段に厚い編成と実作品ではモノラル放送になるものの、ステレオ録音による音の分離感と広がりがスケール感を醸し出している。また、曲想その物が壮大なものとしては、アルバム収録時には「今、ふたたび平和の日が昇る」としてまとめられB面の最後を飾ったM-54M-55何れもタイトルはズバリ「大団円」(残念ながら使用頻度は低いが)や、最終回のエンディングを盛り上げた挿入歌「心を燃やすあいつ」を壮大なボレロ調にアレンジしたM-12「心を燃やす、メロ」等は、ドラマの感動を大いに盛り上げたが、過去作にはあまり無かった傾向の曲である。

更に、「レオ」までのシリーズや「ボーンフリー」等と比べて、大幅にポップでスピード感が強くリズム感を強調した印象がある。例えば日常シーンのM-34「中学生ワンパク」、変身直前のピンチM-48UGM対怪獣 たじたじ」等がそうだ。これらからは、時代的変化による演出のスピード感のアップ的な意識が強く感じられる。同じ事が、怪獣出現のM-40「軍団襲来」とM-50「勝ち誇る怪獣」の使用頻度の差にも見られ、「レオ」までなら重厚なM-50こそが明らかに怪獣出現のイメージなのだが、「80」の怪獣は現れたら即暴れ出しているのが殆どなので、M-50では少々まだるっこしい?為か出現はM-80「コンマ」で一瞬、即大暴れのM-40へ繋がるのが殆ど、となっていったのだろう。因みにポップなと書いたが、この流れは意外な事に「太陽の牙ダグラム」(1981) でわずかに見られる程度で、「機甲界ガリアン」(1984)、「ウルトラマンコスモス」(2001)等では、重厚なシンフォニックな方向に回帰、拡大されている辺り、同時期積極的に流行を取り入れていった渡辺宙明(特に巨獣特捜ジャスピオン、戦え!イクサー1等)とは反対の方向なのは、やはりクラシックを得意とする冬木氏らしい傾向が感じられて面白い。また、「レオ」でも試みられた主題歌カラオケへのメロ入れM-2BM-7Bも特筆したい。推測ではあるが、「ファイヤーマン」「ウルトラマンT(冬木氏は挿入歌のみ参加)の楽曲使用傾向などから、時代の趨勢を感じて試みたものだろう。ジャンル番組ではメロオケと呼ばれ、普通はトランペットやエレキギター一本で歌の代わりにメロディを奏でるのが一般的である。が、冬木氏は大胆にもオケの演奏をそのまま被せるという手法を取っている。筆者はこのような手法を試みている作曲家を寡聞にして知らないが、スピード感とスケール感を両立する方法としては正にうってつけではないだろうか。

もう一つ大きな特長としては、感情描写の為の音楽が多いという事だ。80のテーマと別に矢的猛のテーマとしての「心を燃やすあいつ」のメロディが作られている事一つ取ってもそれは歴然である。セブンやレオと同じく変身前後が同一人格であるにも関わらずにである。番組での中学生編は中途で潰えてしまったが、その為に描かれた豊富な音楽は中盤以降もゲストキャラクターの心情を彩ってくれた。終盤、ストーリー的にお約束的なものが増えても、チープさを余り感じされないでいてくれたのは、この種の音楽のバリエーションの豊富さにあるとも言え、最終章となる4950話においても流用に頼らなければいけないような事態を回避している。

流用の話題が出たが、「80」においては割と多くの流用曲がある。その多くはブリッジやコードと言われる短い曲だが、その一部は「80」と選曲担当が同じ小原孝司の「バトルホーク」(1976)のものである。また同時期東宝制作の「ただいま放課後」(1980)でも「80」で流用されていた曲が使われていた。この辺は制作会社のポリシーにもよるのだが、肝心のメイン劇伴自体のミスマッチ感はあまり無かった為、強い不快感は感じられなかった。また、中盤の「UGM編」以降、「ザ☆」の流用曲が増えていく。交響詩には未収録のミステリー曲等が多かったが、特筆は第四楽章「インベーダー軍団」「勝利の戦い」である。前者は80のピンチにM-53「ウル対怪獣」に変わって、後者は更に逆転時に多用されたが、どちらも過去の冬木氏の作品での曲調(優勢→ピンチ→逆転)がややパターン化していた事もあり、これまでにない新鮮さが感じられる好流用となった。

 ビデオの普及してないTV放送が一度放送したらそれっきりだった時代、感動と興奮を再生する手段は、ムック本とレコードしかなかった。今まで聴く事のできなかった「ウルトラマンや防衛隊が戦う音楽」をいつでも耳にする事ができる、そんな幸運な時代の幕開けに「80」は放映された。そして映像ソフトがリリースされる時まで心の隙間を埋めてくれた貴重な存在が、音楽集アルバムだった。今聴いていても全く色褪せない美しく心を揺さぶる音楽を紡いでくれた、冬木透先生とTALIZMANに感謝したい。彼等もまた、子供番組の音楽に「心を燃やすあいつ」だったのだ。

-編集後記用蛇足文-

80の音盤としては、過去出ていた2枚組CD二種が何れも廃盤で、現在は「ウルトラサウンド殿堂シリーズ9 ウルトラマン80」のみが入手可能です。自分は未確認なのですが内容的には89年リリース版からの抜粋のようで、主要曲は8割方入っているようです。
 劇伴録音日ですが、第1回録音が36日、2回目は放映開始後の414日で主に主題歌、挿入歌のストレートアレンジ、メインタイトルの新バージョンが録音されています。主題歌メロディーをアレンジしたM-52は第1回録音だが、主題歌へのメロ被せ(いわゆるインスト)M-2Bが2回目録音という点から類推して、第1回分の作曲時には主題歌のメロディーは完成していたが録音はまだだったという事になります。320日の特番ではTALIZMANの演奏による主題歌が披露されている事も併せると、主題歌の録音は第1回録音の直後辺りでは無いかと思われます。
 “冬木版ウルトラマンのテーマは、ちょっといじると主題歌の歌詞で歌う事ができる、というのはマニアには知られた話でM-52も同様なのですが、実は「80」では感情描写曲のM-13「矢的猛」にも主題歌の歌詞をはめる事ができるのです。一度おためしあれ。


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